薬について

・前置き

・薬の種類

・薬の効き目

・薬の副作用

・薬はやめられるのか





前置き


精神科、心療内科では薬を使った治療を行うことも多いです。
インターネットや書籍でお調べになった方は、同じ効能(効き目)の薬が何種類もあることに驚かれたのではないでしょうか。

例えば、うつ病に対して使うことのある薬は、保険適応がある薬を数えると20種類前後に及びます。
睡眠薬も10種類以上ありますし、抗精神病薬(主に統合失調症治療に用いますが、その他の治療において使えるものもあります)も20種類以上あります。

どれも同じ効能になっていますが、薬のつくりや特徴はそれぞれ違っているため、精神科医は個々の患者さんの困りごとや生活スタイル、希望・好みなどに沿うように、オーダーメイドで考えています。


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薬の種類



薬にはたくさんの種類があります。
効き目や、出てしまうかもしれない副作用も少しずつ異なりますが、薬の服用の仕方もそれぞれの薬によって異なります。

たとえば服用方法は、
 「1日1回飲むもの」
 「1日2回か3回飲むもの」
 「食後に飲むもの」
 「空腹時に飲むもの」
 「空腹でも食後でもいいもの」
など、いろいろあります。

また薬の形としても、、
 「カプセル剤」
 「粉薬」
 「液体の薬(一回分の小さなパウチになっているものもあります)」
 「口の中で溶けやすくなっている錠剤(ラムネ程度の溶けやすさからオブラートくらいの溶けやすさまで様々、苦くない物も多いです)」
など、いくつかの種類があります。

また、錠剤の大きさも大小ありますし、薬の名前がわかりやすく刻印されているもの、などもいくつかあります。

効き目や副作用はもちろん、これらの薬の「飲み方」についてのご希望を伺うことも多いので、気軽にご意向をお知らせください。



また、「薬といえば飲むもの」という印象があるかと思いますが、近年随分と様変わりしてきました。

たとえば、飲み薬と同じ効き目だけど、
 「1日1回胸や背中に貼るタイプ」の薬(貼付剤:ちょうふざい)があったり、
 「水なしで舌の下に入れて、数秒で溶けるタイプ」の薬(舌下錠:ぜっかじょう)があったり、
 「1か月に一回注射すると、毎日飲んだのと同じような効果が得られるタイプ」の薬(持効性注射剤:じこうせいちゅうしゃざい、LAI(エルエーアイ)と呼んだりします)があります。


それぞれにメリットとデメリットがあり、

 貼付剤:○副作用が出た場合は、飲み薬は飲んでしまうと身体から出ていくまで(分解し排出されるまで)副作用が続いてしまう可能性があるが、貼付剤だと剥がしてしまえば薬の吸収はストップする。
      ○飲むのと比べると、薬の効き具合(血中濃度)が安定する可能性がある
      ○飲んだかどうか忘れたときに、貼ってあるのをみれば確認できる
      △よくくっつくシールなので、皮膚がかぶれることがある

 舌下錠:○胃腸からではなく口の中の血管から吸収されるため、効き目が安定したり早い可能性がある(本当は難しい話なので、あえて簡単に表現しています。)
      ○水なしで服用できる
      △現在使用できる舌下錠は、苦味やしびれ感がでる方がいる
      △現在使用できる舌下錠は、溶かした後数分間(薬の説明書では10分間)、水を飲んだり食事をしたり、うがい歯みがきを控えないといけない

 持効性注射剤:○1か月に1回の注射で、約30日内服したのと同じ効果が得られるため、飲み忘れを防ぐことができる
      ○種類によっては、注射が3か月に1回でいいものもある
      ○薬が身体に取り込まれる強さ・濃さ(血中濃度)が内服と比べると安定するため、効き目や副作用が安定する可能性がある
      △肩(三角筋)や腰の下(中殿筋)に注射するため、痛かったり、服をずらしたりする必要がある(痛みは、人によっても異なりますが、よく言われるのは「血液検査の時の痛みぐらいの痛さ」のようです)


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薬の効き目



お困りの症状に対して薬物療法も行うわけですが、薬によって効くまでの時間、日数が違います。

たとえば睡眠薬は、多くの薬で飲んだ日から効果があることが多いです。

統合失調症などの治療で使う薬は、数日以内に効果がでることが多いです。また、飲み続けることでその後もじわじわと効果が出続け、回復につながることが多いです。

うつ病の薬は、1週間から2週間ほどしないとなかなか効果がでません。早く効果が出るように、と思ってたくさん飲んでも、早く効果が出ることはないようです。

いずれの薬も、処方した医師の説明通りに、用法用量を守って内服していただく必要があります。飲みすぎると有害なものもありますし、中には急に薬をやめることでかえって身体に有害になってしまうものもあります。

薬のやめ方、やめられるか、については下記もご参考ください。


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薬の副作用



病院で処方された薬をインターネットなどで調べると、たくさん副作用が並んでいます。よくなるために飲む薬で、残念ながら副作用が出てしまったことも、時に経験します。

使う薬の種類によっても、出やすい副作用、使い始めた最初頃に起こりやすい(飲み続けるとなくなることが多い)副作用、しばらくたって出るかもしれない副作用、めったに出ないけど起こると怖い副作用、など様々です。

副作用としては、眠気がでてしまうもの、吐き気がするもの、食欲がですぎてしまうもの、身体がむずむずするもの、など多岐にわたるため、実際の診療の中で説明し、お互いの意向が一致したものを処方します。


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薬はやめられるのか



「調子がいい状態が続いているので、薬をやめてもいいですか?」
とか
「この薬を飲んでて、依存症になりませんか?」
などの質問をいただきます。

薬をやめられるかどうか、は個々のケースで異なりますので、主治医にご相談いただく必要があります。

たとえば、「大きなストレスがかかって眠れなくなった。睡眠薬で眠れるようになり、次第にストレスの原因も解決し、薬がいらないような気がする。」といったケースでは、やめられる可能性が高いように思います。
また、「周囲がこれまでと違ったように思えてきて、次第に誰もいないのに悪口が聞こえるようになった。薬を飲むと良くなるけど、やめたら悪くなって、これまで何度か入院している。」というような場合では、薬を続けることをお勧めするでしょう。


我々医療者としては、薬をやめることによる「再発(病気の症状がぶり返すこと)」を防ぎたいため、治療継続を勧めることが多いように思います。
しかし実際に薬を飲む/使う当事者の皆さんにとっては、飲み続けることへの不安や面倒さも大きな問題でしょう。

非常に難しい問題、答えが(おそらく)ない問題ですので、ぜひ一緒に考えていければと思います。


また、「依存症になりませんか?」という質問に対しては、一昔前まで良く用いられていた睡眠薬、抗不安薬に依存性があることが知られています。
私の前職でもある瀬野川病院は、依存症治療拠点病院でもありましたので、依存性に配慮した薬の選び方を提案したいと思っています。



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